英国パンクロック
僕は、叫びたいのに叫べない若者を同情する。パンクはいいはけ口です。
英国病
音楽は時代の記録係。歴史の勉強も、誰々が何年に何をしたのかではなくて、どの様な社会環境だったからこそ、どの様な人から、◯◯のような感情を買って、□□が起こったなど、ことの因果関係を学ぶことが、実質的な役に立つと思います。
70年代のイギリスは、新内閣への不信感から、ポンドが暴落し、公定歩合(中央銀行が、民間の金融機関に貸し出せる基準金利)が15%に引き上げられた。(ポンドが安くなったから)。当時の中小企業は、不動産ブームに乗っかって、沢山の投資をしたのですが、上で言った様に、銀行が苦しくなり、資金引き締めをしたり、第四次中東戦争による石油危機と重なって、相次ぎ経営危機が訪れました。つまり、勝手に外貨建ての預金を受け入れたり、海外の多国籍企業に貸し出した、外国銀行のやらかしって言ったら分かりやすいですね。その他諸々あって、イギリス国民は労働意欲が低下、お偉いさんの既得権益が発生、その他沢山の社会問題を生み出して、当時のイギリスは、「ヨーロッパの病人」と呼ばれてしまいました。調べてみたら、失業率は3.3%でした。うーん、日本の今の失業率は2.5%なのでなんとも言えないです。日本人は怒っていますか?
Sex Pistols
国民、特に若者の怒りはもう積もりに積もったでしょう。後は火付け役を待つだけでした。それがセックスピストルズというバンドでした。
彼らは、「SEX」というクラブの前にたむろっていたジョニーロットン、シドヴィシャスからなる不良少年団でした。ある日、クラブのオーナーから、「うちの店でたむろってんなら、中でバンドをしてくれないか」と言われて、結成しました。勿論楽器もできない連中でした。いきなり楽器を渡され、弾けないのにジャンジャン鳴らしました。彼らがいう「パンク」です。必要なのは「狂い」だけでした。セックスピストルズの看板ベーシストのシドヴィシャスは、棘の生えた革ジャンを着て、中にエリザベス女王のTシャツを着、女王の顔に無数の安全ピンを刺した見た目で、ベースを虐めるように鳴らしていました。
代表曲の「God Save The Queen」はもうそのまんま、エリザベス女王を馬鹿にした曲です。考えてみてください、日本でいう天皇です。狂ってますね、でも、大量に失業者を出した国が悪い、国が狂ってる、国の顔だろ、バカにして当然、俺は狂ってない。という態度でした。歌詞です。
God save the queen
神よエリザベス女王を救ってやってくれ
It's a fascist regime
独裁政治の張本人だから
They made you a moron
お前等もあの女が原因でド低脳
A potential H-bomb
水素爆弾並みにやばい女
God save the queen
神よあの女王を救ってやってくれ
She ain't no human being
あいつに人の心なんて無いから
There is no future
イギリスにも女王にも未来は無い
In England's dreaming
あの女はイギリスという国の中で白昼夢でも見てるんだろう
当時の若者は、彼らが歌う「未来は無い」の中に、やっと未来を見出しました。やっと、自分らの居場所を見つけたのです。行儀悪いフラストレーションの伴ったムーブメントは、若者にとってネガティブなものでは無かった。
規定のものを否定し、壊し、自ら新しいものやファッションを切り開くことに、ポジティブで前向きな気持ちにさせられました。エリザベス女王の顔に落書きしても問題はない。とても合理的なものである。と言う感じでした。だって、落書きされた女王の顔は、自分らが創造したものだから、昔は誰もそんな事怖くて出来なかったから。
ただ当時の若者も、居場所を見つけただけで盲目になり、「パンク」の真髄までは理解しきれていませんでした。セックス・ピストルズのボーカル曰く、
「セックス・ピストルズの客が、みんなお揃いのパンク・ファッションで現れることに俺はムカついていた。こっちの真意からはずれてるよ。俺たちがやってることを理解してない。俺たちは"みんな一緒"なんて真っ平御免と思ってたぐらいだぜ。俺たちのポリシーは、みんなで同じ恰好をして、同じ人間になる事じゃない。パンクとは自分自身に忠実であることだ。そもそもファッションてのは、追いかけるんじゃなく先走るもんだろ」
パンクが最も提示されるべきものは、新鋭性。ネガティブな社会問題によって苦しくなる、そこで自分に忠実に行動した結果、先鋭性を伴って、むやみやたらで自暴自棄なネガティブなものではなく、社会の闇から見出したのフロンティア精神。
自分らの生活を第一に考えた、あまりにポジティブな破壊思想であった。これは正しい「狂い」であると思う。
シドヴィシャスはコカインのやり過ぎで、ステージ上で放尿したり、自傷したりしたが、それをパンクと呼ぶのはちょっぴりお門違いだ。
人間の奥底にあるエゴを、活性化させ、求めるべきもの、手にしたいものを手にするべく、狂いながらも自分を保つというポジティブなものが、正しい「パンク」であると思う。
あくまで個人の意見ですけどね。
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